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両界伝本文(一部紹介)

序の条 両界萬象
「ヲン」という単音が、無色の虚空を展開し、天地の間 を開き、宇宙の全ての構成物の基音となったこと。
これは、少なくとも、その二つの世界においては信じられていたことであっ た。そして、このことが全ての始まりであった。その音が開かれた虚空において、いかなることで発生したのか、あるいは閉じられた虚空の「外」からやってきたものなのか、それを知るものは何もない。およそ、有機体に限定された認識によっては、知り得ることが不可能な、真諦(言葉に表せない高次の絶対真理)として、厳然と運行されたのである。
無色の虚空が展開された時、その宇宙は二つの要素に分離した。この、進化や増殖や発展などとは次元を異にした、恒久不変の要素は、直接干渉を回避する閉鎖空間で隔絶している。宇宙は、この二つの要素の均衡状態を保持する限り、恒久的に不変のはずであった。

二つの要素は、それぞれの要素を体現する存在ー外を有機体に限定され(粗大身)、内を多次元体として構成されている(微細身)機構ー尊格を造化し、その尊格を住まわせる場としての世界を造化した。 

二つの要素、一つを「金剛毘盧舎那」といい、今一つを「胎蔵毘盧舎那」といった。

二つの要素を隔絶する閉鎖空間がそれぞれ内包する「金剛力」と「胎蔵力」と呼ばれる超法力は、無限無窮の質量を誇っている。この超法力は、すなわち物質を構成する要素が、いわば不定形の力量源となって顕在化していることを示す言葉である。それぞれの要素が造化した尊格たちは、あらかじめ各自の体内機構に具備されている能力に応じて、超法力を(招来 )が出来る。
そして、その具備された能力の格差によって、尊階と呼ばれる階級に分別されている。 二つの超法力を隔絶している閉鎖空間の外面(無上結界)を保持する超法力を保有し、最も超法力を発動させることの出来る尊格を真如部という、その下にこれを補佐する形で存在するのが聖衆部であり、この尊格には特に超法力を無機物・有機物の具象体に形状変換させることのできる力がある。
さらに、明部は聖衆部の下にあり、二つの「毘盧舎那」を守護する為の戦闘能力を備えた尊格(闘尊)である。
最下位の天部は、下は超法力をほとんど実存維持程度にしか発動できないものから、上は明部に近い戦闘能力を有するものまで様々である。
彼ら(尊格)は、超法力を招来し、発動させる為の聖なる文句(咒)を唱えることによって、様々な現象を起こし、実存活動を果たす。その身(祖大身)は切れば血の出る実存体だが、その本質(微細身)は純粋な観念体である。彼らには、誕生も成長も死もない。替わりに造化と還元と消滅があるのである。そして、この宇宙に時間の経過の観念はあっても、歴史の概念はない。 

「金剛毘盧舎那」の「金剛力」を招来し、発動させる尊格の一群を「智拳衆」といった。
彼らは、「金剛毘盧舎那」を中心に安置した「金剛浮提」と呼ばれる浮遊大陸に居住し、これを守護していた。無上結界を保持する四尊の真如部を総称して成身会という。この部下に理趣会、十六天会、北斗会、羯磨会、薬師会という戦闘部隊がある。又、微細会という実存活動に必要な具象体を造化するための集団がある。「金剛浮提」は、堅固な岩石の固まりから成っており、「金剛毘盧舎那」を安置する中央区(法界苑)を含む居住区は全て岩石内にある。周囲には薬師会が管理する十二宮と呼ばれる十二基の移動要塞が浮遊している。

「胎蔵毘盧舎那」の「胎蔵力」を招来し、これを発動させる尊格の一群を「禅定衆 」といった。「胎蔵毘盧舎那」を安置する中央区(方便殿)を中心に、地上に放射状に形成された広大な城塞都市(胎蔵城 )に主として居住している。無上結界を保持する四尊の真如部とこれを補佐する四尊の聖衆部を合わせて八葉院という。虚空蔵院、蘇悉地院、の二つの戦闘集団を有し、他に胎蔵城の四方楼門を守護する門衛府、楼門の外に広がる高険な山脈、茫洋たる荒野、渺々 たる沙漠の要所に設置された要塞、基地、営舎(小砦)を守る辺境府がある。具象体造化を行う地蔵院、八葉院などの居住区である内院を管理する蓮華部院などもそれぞれ与えられた勤行 (任務を果たすこと)を行なっている。

そして、この、二つの要素に形成維持されている二つの世界「金剛界」「胎蔵界」は、互いに相入れないものであるがゆえに不倶戴天の存在として憎しみ合い否定し合って、宇宙の原初からの永劫の戦いを続けていた。