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                      T.Grege Game  No.5 | 
                     
                     
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                        …男同士の?! 
                         缶を落としそうになる。男女の行為ならばどうということもないが、男同士など初めて見る。驚いていた。 
                         大きな背中から下へと下がる。黒い毛に覆われた馬尻から伸びる二本の丸太の間にスポットが当たった。縮れ毛の生えた浅黒い袋が前後している。 
                        「げっ!」 
                         思わず声を上げてしまった。狭く窄まっている少年の部位に浅黒く太い杭が打ち込まれていた。何度も出し入れを繰り返される。その度に少年が背中を反らして悲鳴を上げた。華奢な身体を押さえ込む何本もの腕が見える。和巳は口を手の甲で押さえ、腹に拳を押し付けていた。 
                         男が体重を掛けて激しく押し込む。 
                        『ああっ…許して…もう、許して…こわれちゃぅうう』 
                         少年が息を途切らせる。男が何度か身震いして放った。 
                        『二人目でこれじゃ、全員終わるまでもたねぇかな』 
                         し終えた男が、別の男と入れ替わった。その男が少年の股間に顔を寄せた。 
                        『そうでもないじ、ここはずいぶん元気だからな』 
                         男の掌の中でボリュームを増している少年のそれが映った。含まれ、ねぶられる。少年が苦しげな中に恥ずかしそうな表情を見せた。それが和巳の背筋をゾクッとさせた。 
                        『へっ…感じてるじゃねぇか』 
                         みんながあざ笑う。ますます恥らって身悶えた。 
                         ヤラセとは思うが真に迫った輪姦のカゲキなシーンに興奮していた。腰の当たりがズキズキと疼き、股間が硬くなっていく。手がパジャマの中に入り、握っていた。母親のせいか、『女』にはむしろ嫌悪を覚えていたが、それでも男同士の行為で感じるとは思わなかった。 
                        …俺って…そういう気(ケ)があるって…こと? 
                        「面白いか?」 
                         声で頭を叩かれた。顔を上げる。あわててしごいていた手を出した。バスローブを着たオーナーが側に立っていた。気づかなかった。恥ずかしくなる。ビデオが切られた。 
                         オーナーが、サイドボードでブランデーをグラスに注いだ。向かい側に座る。 
                         何か言われるかと構えていたが、黙ったままだった。恐る恐る尋ねた。 
                        「あの…沢口には、バスケして勝てばバイト料がもらえるって言われたんですけど、それにしては一ゲームで三万ってちょっと多いと思うし、それに『一ツ星』とかって、何ですか」 
                         オーナーは、右の人差し指で眼鏡の中央を押し上げた。 
                        「今日だけのつもりでやったのだろう?だったら、聞かないほうがいい」 
                         ずいぶんと気になる言い方だ。かえって興味がわいてしまう。先輩を殴ったのだ。部活には戻れない。でもバスケットへの情熱とかがなくなったわけではない。むしろ、募るばかりだ。どこでもいい。バスケができるなら。奥住とならすごく楽しいだろう。室生とも戦ってみたい。それに、オーナー自身にもひどく引き付けられていた。もっとオーナーのことを知りたい。もっと、こうして過ごして…みたい…。 
                        「俺、バイト料はどうでもいいけど、またバスケがしたいんです。あそこで」 
                         オーナーが腰を上げた。テーブル越しに伸びてきた手が、下を向いていた顎を掴んだ。ぐっと上げられる。見下ろす眼は、…闇のよう…氷のよう…。動けない。瞳すら外せない。 
                        「さっきのビデオで勃ったな」 
                         頬が熱くなって、うなづくだけで精一杯だった。 
                         オーナーが座った。左手のグラスの中で琥珀が揺れる。ゆっくりと薄い唇が動く。 
                        「…毎月第二、第四の金曜の夜に、あのガレージで三ゲーム開く。その勝利チームのメンバーをオークションに掛け、せり落とした客人(ゲスト)が、一晩自分のものにするシステムになっている」 
                        …ゲームして、勝ったメンバーを何だって? 
                         きょとんとして見返している和巳に、オーナーが口はしをゆがめた。 
                        「つまり、メンバーは客人に買われて、セックスの相手をするんだ」 
                         何の…相手だって? 
                         ようやく気づく。 
                        …嘘だろーっ!? 
                         顔も身体も硬くなった。 
                        「いくら現役高校生でも、単にベッドの相手として斡旋するだけでは、他の会員制秘密クラブと変わりない。それよりもゲーム観戦でエキサイトさせ、オークションでせり落としたという満足感に浸らせてやることで、いっそう価値が高まり、価格も上がることになる」 
                         ごくりと唾を飲み込んでいた。背筋に緊張が走る。 
                        「星の数は、メンバーのランクを表している。星の数が多ければ、オープンの価格設定が高くなる。それだけ、自分に入ってくる金も多くなる」 
                         ブランデーを含んでから、続けた。 
                        「私は、別に事業をしている。ガレージ・ゲームはあくまでも道楽、儲けにはこだわっていない。配分はフィフティフィフティ、こちらの分はほとんど経費に当てている。星はスタート時『二つ星』で、最高『五つ星』になれば、いずれ卒業後にでも車の一台も買ってやるし、行きたければアメリカに留学させてやってもいい」 
                         それは…体を…売るってこと…だ。女相手のホストならともかく、男…相手にそんな恥知らずなことをするヤツがほんとにいるのか? 
                         情けないほど声がかすれていた。 
                        「そんな…こと、できっこないですよ、そんな…」 
                         オーナーの声が冷たく笑う。 
                        「一度一晩で十万単位の金を手にすることを覚えたら、我慢できるようになる。それどころか、沢口などは張り切ってやってるぞ」 
                         ショック…だった。青くなっていると、追い打ちが掛かった。 
                        「聞いたからには、やってもらう。期間は、高校卒業まで。それまでは抜けられない。もし抜けようとしたら」 
                         沈黙が不気味だった。目を上げる。オーナーは和巳のおびえる様子を楽しむかのようだった。 
                        「高校生の家出もけっこうある。失踪してもその程度とみられて警察だってそう熱心には捜索しない」 
                         とんでもなく恐ろしい黒社会にはまり込んでしまった。だがもう手遅れだった。体が震えてきた。 
                         オーナーが、オープンキッチンの台から、ノートを持って来た。スコアブックだった。丹念に書き込まれている。審判の取らなかったファウルやプレイ態度も書き込まれている。三つピアスはこれを知らないのか…。 
                        「これは私がつけている。評価は勝敗はもちろんだが、テクや試合内容を考慮している。おまえは見込みはあるが、まだまだ甘い。『一つ星』に落ちないよう、せいぜい腕を磨くんだな」 
                         これをつけているなら、オーナーは経験者なのだ。 
                        「『一ッ星』ってどうなるんですか…」 
                         オーナーがリモコンでビデオをつけた。さっきの続きが始まった。 
                        『俺は後背位(バック)のほうが好きなんだ』 
                         少年が手足をバタつかせてもがく。乱暴にうつ伏せにされて尻を浮かされた。獰猛な肉棒が容赦なく突き立った。悲鳴も上げられない。別の男が少年の前に膝をついた。 
                        『じゃ、俺はオーラルでやるか』 
                         口に近づける。 
                        『嫌、嫌ッ!』 
                         嫌がるのを無理やりこじあけて突っ込んだ。 
                        「ゲームに勝ても客人がつかないし、負ければ彼らに輪姦(まわ)される。客人に抱かれるのは金の為に我慢できても、彼らの暴行は堪えるだろう」 
                         これはヤラセではない。刃物が肌をかすったようで、冷汗が出る。 
                        「ついて来い」 
                         否応なしだ。オーナーが手前の扉を開けた。カーテンが開いたままの窓際にキングサイズらしいダブルベッドが置いてある。体がすくんで動かない。背中を押されて、よろよろ寄った。さらに力を入れて背中を突かれて、ベッドの上に突き飛ばされた。 
                        「あっ!?」 
                         あわてて仰向けになった。オーナーが眼鏡を外していた。 
                        「本来なら、今頃は客人の相手をしているところだ。沢口たちのようにな」 
                         ビデオの少年と沢口が重なった。沢口なんて、どうみても男になんか、ヤラれそうには見えないのに…それに、あの優しくて真面目そうな奥住が…今頃、あんなことを…。 
                         背筋がぞくっとする。だが、悪寒ではなかった。体が火照ってくる。 
                         オーナーが眼鏡をサイドテーブルに置き、封筒を和巳の手元に投げて寄越した。 
                        「一回切りを許したのは、私だからな。私が競り落として帰してやったんだ。それなのに、おまえは戻ってきた。聞かないほうがいいと言ったのに、知りたがった。つまらん好奇心など起こすから、こんなことになるんだぞ」 
                         和巳の上に覆いかぶさってきた。顔が近付いてくる。 
                        「これから先のことは、せり落とした私の当然の権利だ…」 
                         オーナーの唇が…重なった。 
                        「うっ…」 
                         冷たい。プンと酒の臭いがした。強く吸い付いてくる。 
                        …これ、俺のファースト・キスじゃん… 
                         なんて悠長なことを…。それにしても男とキスだなんて気持ち悪いはずだ。『オカマ』を掘られるなんて、ひどく屈辱的なはずだ。でも、きっと、女とするよりも自分には合っている。それに…どうせ、もう後には引けない。 
                         ダーティな世界にいる恐ろしくて冷たい男と危険でいけないことをする。映画の宣伝文句みたいにスリリングでエキサイティングなことじゃん…腹括っちゃえ! 
                         パジャマのボタンが外されていく。オーナーに顎を引かれる。熱くぬるっとした舌が入ってくる。先が絡まり、口の中をかき回される。荒い息が漏れ合う。頭の中が痺れてきた。 
                         オーナーが和巳のズボンの中に手を入れた。ヒヤリとした手が捉えた。 
                        …わっ…握られたっ! 
                         思わず身構えた。ぐっと扱かれる。緊張してしまう。ようやく唇を離したオーナーの舌が首筋を辿っていく。 
                        「ヤッ!…」 
                         その舌の動きに敏感に反応していた。オーナーがバスローブを脱いだ。引き締まった筋肉が無駄なくついている。着やせするのだろう。和巳の方も裸にされた。体を重ねる。肌が直接触れ合った。擦れ合う。滑らかな温もりに鋭敏な刺激が入り込んでいく。 
                         胸のふたつの突起を舌で弾かれ、指先でクリッと回された。 
                        …そこ、くすぐったいな… 
                         じっとしていられなくて身をよじった。オーナーの顔がさらに下に落ちていく。何をするのかわかって上半身を起こした。 
                        「待って…それっ!」 
                         だが、強く股間を広げられた。反射的に膝を合わせようとしたが、無駄だった。濡れた洞に含まれた。 
                        「わっ…」 
                         逃げ腰に回った手で引き寄せられる。ゆっくりとしゃぶられる。オーナーの舌が和巳のモノに絡まり、這っている。 
                         何もかもが初めてだから、体の方が驚いていた。かえって、感じてこない。薄目を開けると、オーナーの頭が揺れていた。 
                        …オーナーが…俺のを… 
                         そう思った途端、感じ出した。オーナーの口の中で激しく自己主張し出す。だんだん気持ちよくなっていく。 
                        「はぁ…あっ…」 
                         たまらなくなって腰が動く。オーナーが手の中に移して扱いた。冷たい眼が少し緩んで見下ろした。 
                        「どうだ、自分でするのと比べて、どっちがいい?」 
                         ただ直線的な刺激を乱暴に与えるだけのガキのオナニーよりはずっといい。でも、すぐには返事できない。オーナーの指先が先端の割目を擦る。ぬめぬめと先走ってくる。 
                        「うっわっ…」 
                         首を振る。オーナーの胸に倒れこんで腕を掴んでいた。 
                        「答えろ…どっちなんだ」 
                         伏せている顎を掴まれる。ようやく答えた。 
                        「こっち…だよ、こっちの方が…ずっと…いい」 
                         唇が塞がれる。 
                        「ん…うっ…」 
                         和巳がオーナーの首に腕を回して抱きつく。もうこうなったら経緯なんか、どうでもよくなっていた。体の中からの衝動でやっていた。 
                         オーナーの舌を歯で挟み込んで激しく噛んだ。唾液が顎から首筋に垂れていく。暴発する寸前だ。オーナーが耳元で囁いた。 
                        「いけ」 
                         ぶわっとくすぐられてイッてしまった。力が抜け、ベッドに倒れこんだ。オーナーが和巳の飛び散らしたザーメンを指先にこすりつけた。和巳の股間にその手を入れた。 
                        「あっ!?」 
                         指先がソコに触れ、すぐに入り込んできた。痛くて息が止まる。体が固まる。異物の侵入を拒んで、強く窄めていた。だが、それよりも強い力で動かされ、粘液が滑りを良くして奥へと進んでいく。堅く閉まっていたソコが柔らかく広がっていく。痛みと違和感が薄れていく。二本目もねじ込まれた。 
                        「!」 
                         出口が異様に広がっているのがわかる。だが、今度は動かされていても体がついていった。音がするほどになってから、抜かれた。両脚が抱え上げられる。大股を広げることになった。体が起きそうになる。足の間にオーナーが体を入れて被さってきた。ソコに先端が当てられ、倒されると同時に…。 
                        「わあっ!」 
                         二本分よりも堅くて大きなボリュームが、狭い場所に無理やり入ってきた。オーナーが中で膨らませた。 
                        「痛っ!」 
                         広がって裂けるようだった。 
                        …とんでもないよ!こんなの、我慢できないっ! 
                         体が拒んだ。満身の力で手足をバタつかせた。膝がオーナーの脇腹を打ち、手が頬を張る。だが暴れればそれだけ、痛みが増していくだけだ。 
                        「暴れるな!」 
                         オーナーが泳ぐ両手を掴んでベッドに貼り付けた。オーナーの腰が進む。ぐっぐっと突き上げる。痛みに気を失いそうだった。 
                        「わっ!あっ!」 
                         悲鳴にならないくらい息が詰まっていた。涙が滲んでくる。オーナーが指を絡めて来た。力強く握られる。何故か心が落ち着いて、ふっと力が抜けた。オーナーがずうっと奥まで入っていく。 
                        「…オーナー…」 
                         うっすらと目を開ける。オーナーの端正な冷たさが、緩んでいた。 
                         オーナーが体を重ねてくる。過重に胸がつぶれそうになる。だが、その重みが和巳の抵抗を止めた。オーナーの早まっている鼓動が伝わってくる。乱れた呼吸が耳に届く。激しく腰が進む。自分の体の中でオーナーが動いている。 
                        …オーナーが…俺のことを… 
                         抱くのに興奮してい。うれしい。うれしい! 
                        「ああっ、ああっあぁっ!」 
                         自然と声が出る。 
                         オーナーに夢中になっていた。メチャクチャに。男にむしゃぶりついていた母親と同じだ。 
                        …これじゃ、あの牝ブタのこと、笑えねぇよォ… 
                         オーナーの動きが速まる。苦痛はそれとして残っているが、それ以上に興奮が昂ぶってきた。 
                         フィニッシュか、ギシッギシッと腰骨が軋み、息も止まる。 
                         オーナーにしがみ付いた。オーナーも和巳を抱き締めた。じっとしていられなくて全身を震わせた。 
                         体中の血管が破裂しそうになる。オーナーの背中に回した手に力が入る。 
                        「また…バスケしたいなんて…言うから…バカな…奴だ…」 
                         オーナーの息が漏れたが、和巳には聞こえていなかった。 
                         挟まっていたものが、脈打った。射精を感じた和巳がいっそう堅く抱きついた。少ししてオーナーが体を離そうとしたが、和巳のソコがキツクしまっていて抜けなかった。低く囁いた。 
                        「このまま、またいけそうだ」 
                         つないだまま体を起こした。少し膨らんでいた和巳のモノを握る。力が加わるたびに、ソコが締まる。オーナーのが絞られて、入ったまま、硬さを増した。和巳はもう自分からキスして、オーナーの頬や首筋の雨にように降らせた。手もオーナーの尻に伸びて掴んでいた。 
                         さっきはただオーナーにされているだけだったが、今度は違っていた。箍が外れたというか、切れたというか、『獣性(ケダモノ)』を剥き出しにした荒っぽい欲望が湧き上って来る。 
                        「ああっ!早く尻の中でぶっ放せよ!俺もぶっ放したい!」 
                         和巳が喚いて体を振った。オーナーが和巳を離して、両脚を肩に掛け、二つに折った。離されたモノが揺れる。自分で握っていた。過激に扱く。汗が散り、呼吸が荒れる。激しくぶつかり合う。男同士の交接(ファック)。まるで1on1(ワンオンワン)で競り合うような…、こんなにもゾクゾクする凄いコト…。体中を駆け巡る刺激が痛いほどだ。前と後、どっちからの刺激か、ごちゃごちゃになって、頭も体もパニくっている。興奮が臨界を越えてしまう。オーナーがイッたのもわからない。 
                        「凄い!凄い!!」 
                         目の前が真っ白にスパークした。あちこちに飛び散らしていた。同時にオーナーのモノを排出していた。汗が、唾液が、精液(ザーメン)が…肌もベッドも汚していた。 
                         息を上げる和巳からオーナーが離れた。バスローブで和巳のがかかった顔を拭う。 
                        「…式場」 
                         呼ばれて目を開けた。ゆっくりと呼吸が戻ってくる。 
                        「はい…」 
                         腕で額を擦る。オーナーは背を向けていた。その背中に赤い筋が幾つも走っている。和巳のつけた爪痕だった。 
                        「プレイが荒っぽ過ぎる。客人の相手をするときは、少し『しとやか』にしてみせろ」 
                         メチャメチャ乱れて、みっともないトコを見せてしまった。熱っぽい体が、恥ずかしさでもっと熱くなっていく。そのことの方が先に立って、客人の相手をしなければならないことはしまわれていた。 
                         ワン・ゲームした後の快い疲れに眠くなった。 
                        「俺…『五ッ星』になれるかな…」 
                         金や車が欲しいわけではない。オーナーから最高の評価が欲しい。今まで誰かに誉められたいとか認められたいとか思ったことはなかった。ただただバスケが好きでやっていた。でも明日からは違う。 
                         明日からガンガンやってやる! 
                         ボールをリングに叩き込むダンクシュート。そのイメージトレーニングの中で、和巳は眠った。 | 
                     
                     
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                      (完)  | 
                     
                     
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